プロジェクトProjects

イオル文化交流センター

2022
北海道沙流郡平取町

構  造:木造
階  数:地上1階
延床面積:556㎡

山脇克彦建築構造設計( 構造設計 )
アルス・ゼータ( 設備設計 )

日高地方の平取町二風谷はアイヌ文化が長年育まれてきた地区であり、今もアイヌの伝統が色濃く残る。計画地周辺には、アイヌ文化博物館を中心に、アイヌの住居(チセ)等、アイヌ文化や歴史に触れることができる施設群が豊かな自然環境の中点在している。当施設は、アイヌの工芸品の技術伝承を目的とした複合施設であり、修学旅行生の舞踏体験等に利用する「交流室」、伝承者育成事業の研修拠点となる「研修室」、民具製作等を行う「作業スペース」などからなる木造平屋である。
長い歴史を持ち現代においてもその独自性を損なっていないアイヌ文化を次世代に継承する施設の設計にあたり、培われてきた文化を表層的で記号的なデザインとして扱うのではなく、その質実剛健な態度を素直に反映させる設計を心掛けた。具体的には、チセの屋根形状や、コタンの群造形といった形態を記号的に扱う態度ではなく、むしろすぐそこにあり簡単に手に入る材料の活用(平取産カラマツ、ガルバ鋼鈑)、保守性(一枚屋根)、耐久性(コンクリート腰壁の立上り)といった合理的な態度を徹底させ、日々の活動を受け止める器を提供することを目指した。それは、アイヌの人々から切望された、歴史の一部として消費される象徴性ではない、今を自然と共に生き抜くための道具としての建築である。
適材適所の木架構からなる交流室、エントランスホール、管理研修ゾーンの3つの機能がパラレルに連結しシンプルな長方形平面(4.5m×38m)を成す。交流室には、14.5mスパンの無柱空間となる張弦梁を架けた。借景となる沙流川の景色が広がる大きな気積のエントランスホールは登り梁を0.91mピッチで並べリズミカルな表現とした。管理研修ゾーンは、住宅スケールの空間となるため、3.2mの高さに中間桁梁を設け、柱の座屈長さを短くし木造住宅と同等の材で構成した。多様性のある架構の下に異種プログラムがパラレルに連結し一枚屋根で統合した。