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奥尻町総合庁舎

2024
北海道奥尻郡奥尻町

構  造:鉄筋コンクリート造 + 木造
階  数:地上2階
延床面積:2,438㎡

山脇克彦建築構造設計( 構造設計 )
総合設備計画( 設備設計 )
キタバランドスケープ( 外構設計  )

北海道南西沖地震から30年が経過した奥尻町。復興優先のため見送られていた庁舎、議場、消防、福祉センターを集約し改築する総合庁舎の計画である。
奥尻島は海岸段丘が発達した平坦な台地形状で8割が豊かな森林で覆われている。奥尻地区は狭小な谷地に形成されており、河川沿いの不整形な敷地が残されていた。
集約に際し適切な機能共存を図った。敷地中央に建物を配置し敷地形状を活かしながら性質の異なる駐車場、消防訓練場、防災広場等の外部機能をゾーニング。平面では上下階で連続するループ動線により、利用者・利用時間が違いながらも連携が必要な庁舎、消防、議会機能を分離しつつ接続させた。執務室を中心に諸室を囲う”一目でわかるワンルーム”の構成とし、過去の記録に基づき平時から災害時の機能へ転換させる。
必要な気積の確保の他、谷地における上部からの採光や通風の確保、通りに対する圧迫感の軽減、塔屋やハト小屋の確保、特定風向の耐雪や雪庇対策を統合的に扱うべく、東西、南北の2つの断面を立体的に結合させる形態とした。断面に合せH型のRC平面に場所毎の木架構屋根を組込む混構造を採用。執務室は立体張弦梁と支点間距離短縮の斜め方杖、座屈補剛材を組み合わせた逆四角錐連続架構で大スパン化。共用部は集成材登り梁と腰折れ梁で気積を絞り、議場は島内トドマツによる傾斜梁と立体方杖で高天井を確保した。生まれた一体的な屋根の稜線は海岸段丘や谷地の緩い傾斜、周囲の勾配屋根の街並みに馴染み、内部ではRCと木の異架構が連続する空間体験を作り出す。
島内産業を見据えた構造選択の他、外装材は塩害に強いアルミと島内トドマツを加工した木板張りを選定。島内資源活用と災害時レジリエンスの観点から木チップボイラと地中熱の複数熱源としZEBReady仕様を確保した。
離島という特異点は様々なレベルの最適解として集約、複合、混合を生み、それらを統合、結合、変異させCompoundsとして建築を導いた。

 

 

 


小清水町防災拠点型複合庁舎

2023
北海道斜里郡小清水町

構  造:鉄筋コンクリート造
階  数:地下1階、地上2階
延床面積:3,949㎡

山脇克彦建築構造設計( 構造設計 )
総合設備計画( 設備設計 )
プラッツ( 外構設計 )
アトリエブンク+乃村工藝社( 内装デザイン )
乃村工藝社( VID、FFE )
ワイライツ( 照明デザイン )
Studio Akane Moriyama( ファブリックデザイン )
フェーズフリー協会( 防災監修 )

世界自然遺産の知床に程近い、「花と野鳥のまち 小清水町」の複合庁舎である。知床へと続くオホーツク海周辺は近年、観光ツーリズムにより活気づく一方、内陸部に位置する街なかは人口減少が進み衰退の一途をたどっている。にぎわいを街なかへと誘発し、フェーズフリーの視点を取り入れた町民に寄り添う新たな防災拠点をつくるため、役場機能・保健センター機能・公民館機能の複合、商工会事務所の合築、フィットネスジム・カフェ・ランドリーを有する「にぎわいのある空間」を併設する官民連携プロジェクトが始動した。
建物は、求められた諸機能を7つの小さなボリュームに組み直し、国道(商店街)に面して長屋のように南北に連ねる構成とした。建物中央部にはハイサイドライトを設けた開放的な「じゃがいもストリート」が東西を貫き、国道から直接歩行者を引き込む計画とした。
1階は「にぎわいのある空間」と役場の主たる窓口機能が占め、町民主体の居場所として利便性を高めた。執行部及び議会機能は2階にまとめ、災害対策本部としての機動性に配慮した。斜面立地であることから、地階も重要なファサードとして、国道側にガラス張りで開放的なギャラリー空間を設け、既存の街並みのアップデートを図った。
構造はRCラーメン架構を採用し、大スパン部にはPC梁を2,100mmピッチで配する強靭なスケルトンをかたちづくる。外装はPCaパネルで覆い、堅牢かつ省メンテのディテールを徹底した。一方、内部仕上げには小清水を象徴する土壁や木、光を透過するファブリックなど多彩な素材を織り交ぜ、無骨なRCの空間と対置させるように設えた。
7つの小さなボリューム群は、ひとつひとつがまちをかたどる要素であり、内部ではそれらが空間の高さや広がり、光や素材など物理的な環境の違いによって顕在化される。多様なプログラムに特殊な立地条件、不確定な未来など与えられた現代的な課題に対し、さまざまな主体を受け入れ許容する、町民にとって真に開かれた庁舎となることを目指した。

 

 

 


今金町立今金中学校

2023
北海道瀬棚郡今金町

構  造:鉄筋コンクリート造 + 鉄骨造
階  数:地上2階
延床面積:5,297㎡

山脇克彦建築構造設計( 構造設計 )
総合設備計画( 設備設計 )

北海道南西部に位置する今金町における中学校の建替え計画である。今金町は全道、全国に先駆けて体育館内包型のコンパクトな小学校を実現し十数年に渡り運用を続けてきた。新しい今金中学校においては先行事例に学び発展させた、体育館、武道場、ランチスペースの3つ大空間を教室群が包み込む次世代のコンパクトスクールを提案した。
平面構成は、体育館等の大空間を取り囲むように回遊動線を巡らせた上、南面には学年ごとに普通教室・ワークスペース・WCをまとめた教室ユニット、東西面には管理諸室と特別教室群を配列した。コンパクトな矩形平面とすることで、共用動線の単純化、一体化による暖房負荷低減を図っている。また学習の場を閉じた教室の中だけに限定せず、開放的な吹き抜け空間や落ち着いた小さなスペースなど特色を持った自立的な学習や交流の場を回遊動線上に点在させることで、学年を超えた学校全体のコミュニケーションを誘発し、学校としての一体感と賑わいを創出する。
体育館、武道場の上部に設けたハイサイドライトは、共用廊下を介して各教室への自然採光、自然通風を行うことで、建物全体で自然エネルギー利用による環境負荷低減を可能としている。
外観は、校舎と体育館がひとつの建物となる体育館内包型のメリットを活かして、南北方向に開いた門型形状によるシンプルな形状として、周囲の農作地や山々の雄大なスケールに調和する力強い佇まいとした。
生徒の生活の中心となる普通教室・体育館・武道場には、道産材のアサダ・イタヤ・カバを使用したフローリングを部屋の特性に応じて使い分けた他、共用廊下のシナ合板天井や、体育館の屋根架構など、地場産木材による温かみのある空間づくりを行った。