札幌市立大学は、旧市立高等専門学校と高等看護学院を統合した大学として2006年の春に開校した。この計画はそれぞれの既存校舎に対する増築であり、新設された大学は、看護とデザインの二つのキャンパスを持つことになった。緑豊かな郊外に立地する「芸術の森キャンパス」と都心部にたつ「桑園キャンパス」である。まったく異なるコンテクストやプログラムをもつ二つのキャンパスではあるが、二校が一つの「札幌市立大学」として共通のイメージをもつ事が強く要望された。また、設計から開学までわずか18ヶ月という厳しいスケジュールのプロジェクトでもあり、実施設計が終了した時点においてもなお教学プログラムの一部が確定していないという状況であった。
このような設計条件に対する解答として、最小単位のモジュールの反復により空間を構成し、それをプログラムにあわせて適宜連結する「積分的」な空間構成を採用した。立面においては、1.5m間隔で立つ巾25cmの極小柱の間に二重のガラススクリーンと電動ブラインドをはめ込み簡易な
ダブルスキンファサードとした。平面おいては、1.5m幅のジョイストスラブを基本単位とし、主要な部屋はすべてこの整数倍の大きさとした。主要空間の領域には基本的に耐力壁を設けていないため、自由に空間の大きさを調整できる利点により教学プログラムの変更にも柔軟に対応可能となった。同一部材を反復利用する空間特性に対応して構造にはPC圧着工法を採用し、短工期で高品質の躯体をつくるとともに発生廃棄物の低減を図った。またマイクロガスタービンの導入(芸森キャンパス)やエネルギーパイルによる
地中熱ヒートポンプ(桑園キャンのパス)の採用など、新エネルギー利用も積極的に行っている。
周知のように旧札幌市立高等専門学校は清家清先生の手による作品である。すでに完結しているこの美しいキャンパスに、先生のデザインを尊重しつつ4階建て4000㎡もの大きさの建物を挿入することは困難を極めた。道路を挟んで併置する新旧の建物は表情こそ違うが、技術を尊重した共通のデザイン性を感じていただければ幸いである。